【定年後もイキイキ働く②】年金を減らさずに働くには?収入のボーダーライン
この記事は、特集「定年後もイキイキ!60代・70代のための仕事・年金・働き方ガイド(全5回)」の第2回です。
「働きたいけれど、年金が減るのは困る…」と悩んでいませんか?
実は、年金制度の仕組みを正しく理解すれば、将来の住まいにかかる費用や日々の家計に無理なく余裕を持たせるために、収入を得ながらも年金を減らさずに働くことが可能です。
本記事では、在職老齢年金の調整ルールや年金が減らされない働き方のコツ、そして60代・70代にとって気になる「収入ボーダーライン」について、住まいと家計の安心感という視点を重視してわかりやすく解説します。
年金を減らさない!住まいを支える賢い働き方
働きながら年金を受け取る際、多くの人が気になるのが「在職老齢年金」の仕組みではないでしょうか。これは、60歳以上で働きながら厚生年金を受給する場合、給与と年金の合計額が一定額を超えると、年金が一部減額される仕組みです。
この制度によって年金の一部が調整されるケースもありますが、目指したいのは「年金を減らさずに、家計に余裕を持たせること」です。賢く働くポイントを押さえれば、収入を得ることで毎月の家賃負担を軽減したり、安心してゆとりのある生活を送ることが十分に可能です。
在職老齢年金についての詳しい記事はこちらから☟
■在職老齢年金とは?年金が減らない働き方と計算例を解説
まずは、年金が全額支給されるための具体的なボーダーラインと、それを超えないための収入調整のポイントを見ていきましょう。
年金の減額に関わるのは、以下の合計額です。このラインを知ることが、年金を維持しながら、住まいにプラスとなる収入を得るための第一歩です。
月収+月額換算した賞与+老齢厚生年金
この合計額が(2025年度時点)51万円以下であれば、原則として年金は全額支給されます。
※賞与がある場合は、年間の賞与を12で割った月額換算額が含まれます。そのため、賞与の有無や額によって、月々の給与で調整できる幅が変わることを理解しておきましょう。
たとえば、老齢厚生年金が月10万円の場合、51万円から10万円を引いた41万円が、年金が減らない月収の目安となります。
- 月収+月額換算した賞与+老齢厚生年金の合計が月51万円以下なら減額なしで受け取れる
- 対象は「老齢厚生年金」のみ。基礎年金は減らない
- 判断基準は「本人単独の収入」。夫婦どちらか一方が51万円を超えても、もう一方の年金は減額されない
※正確な基準額は、年度によって変動する可能性があります。最新の情報は日本年金機構の公式サイト[1]をご確認ください。
年金についての詳しい記事はこちらをご覧ください。
■知っておきたい年金のこと(国民年金・厚生年金・在職老齢年金・障害年金・特別支給の老齢厚生年金)
働き方と住まいの安心を両立させるためのケーススタディ
ここでは、働き方によって年金受給額がどのように変わるか、具体的な事例を通して、家計と住まいへの影響という視点を中心に解説します。
【ケース1】年金を減らされずに働くAさんの例
Aさんは、年金を受け取りながら、パートタイムの仕事で毎月10万円の収入(賞与を月額換算した額を含む)を得ています。年金も含めた毎月の平均収入は26.8万円ほどになり、ポイントは「働いても年金が減額されていない」という点です。
Aさんの収入の内訳は以下の通りです。
・老齢厚生年金:月10万円(年額120万円)
・仕事による月収・賞与(賞与は月額換算):月10万円
・老齢基礎年金:約6.8万円
Aさんは老齢厚生年金と給与・賞与を合わせても月20万円。基準額の51万円を大きく下回るため、年金が減らされることなく全額受け取れています。
年金に加え毎月10万円の収入は、生活費や家賃の負担を補うのに十分な額です。年金を減らさずに、賃貸物件での安心できる暮らしをしっかりサポートできます。
【ケース2】年金の一部が減額されるBさんの例
Bさんは現役並みに働いて、毎月の給与と月額換算した賞与の合計が44万円の収入を得ています。働き方を工夫しながら年金も受け取っていますが、その働き方のために年金の一部がカットされています。
Bさんの収入の内訳は次の通りです。
・老齢厚生年金:月10万円(年額120万円)
・仕事による月収・賞与(賞与は月額換算):月44万円
・老齢基礎年金:約6.8万円
Bさんは年金と給与を合わせると月54万円となり、51万円の基準を上回るため、年金の一部がカットされるケースです。
そのため、在職老齢年金の計算ルール「(44万円+10万円-51万円)× 1/2」に基づき、年金は年間18万円(月額1.5万円)減らされることになります。結果として、Bさんの老齢厚生年金は月8.5万円に減額されています。
最終的な1ヶ月の総収入は以下の通りです。
・月収:44万円
・老齢厚生年金(減額後):8.5万円
・老齢基礎年金:約6.8万円
→ 合計:約59.3万円
Bさんの総収入は月59.3万円と高収入ですが、年金が減額されたという事実は気になるところです。
収入が多くなると年金の一部がカットされる「在職老齢年金」制度の調整を受けますが、それでも高い総収入が得られます。家賃の高い物件への住み替えや、よりゆとりのある生活を送りたい方にとってはメリットが大きいでしょう。ただし、年金がカットされた分、税金や社会保険料の負担増も考慮し、手取り額と家賃のバランスを考えることが重要です。
年金を減らさず、家賃負担を補う働き方のコツ
年金と月収の合計が51万円を超えない範囲で働くことは、家賃や生活費を補う収入を得て、将来の住まいへの安心感を高めるための重要な戦略です。
老齢厚生年金の額が高い方や、高収入を希望する方は、以下の点を考慮して働き方を調整することで、年金の減額を抑えることができます。
- 収入額を調整する(家賃の目安から逆算): パートタイムや業務委託、アルバイトなど、収入を細かく調整しやすい働き方を選び、家賃の不足分を補うことを目標にする
- 労働時間・日数を調整する : 短時間勤務にしたり、週の勤務日数を減らすことで、収入と年金のバランスを取りやすくする
- 個人事業主・フリーランスとして働く: 個人事業主として得た「事業所得」は、在職老齢年金における年金の減額対象となる「給与」に含まれないため、自宅でできる仕事なども検討できます。
※役員報酬として受け取る場合などは対象になる可能性があるため要確認)。
なお、年金と月収の合計額によっては、所得税や住民税、健康保険料などの負担が増える場合もあります。手取り額を意識した働き方も大切です。ご自身の具体的なケースで不安がある場合は、お近くの年金事務所や社会保険労務士などの専門家にご相談いただくことをおすすめします。
賢い働き方で安心のシニアライフを
働き方を少し工夫するだけで、年金を減らさずに安定した収入を得ることが可能です。自分の年金額や収入見込みを把握し、「月収+年金が51万円以下」のラインを意識することがポイント。
この知識を活かし、月々の家賃をカバーできる副収入やゆとりある生活費を得て、ご自身のライフスタイルに合った働き方を見つけましょう。
毎月の収入に少し余裕が加わることで、生活面の安心感が高まり、今後どのような暮らし方を選びたいかをゆっくり検討できるようになります。
老後の暮らしを考えるとき、安心して長く住める住まいを選ぶことも大切な要素です。駅近で見守り体制が整ったシニア向け賃貸は、働きながら無理なく暮らしを続けたい方にとって、選択肢のひとつとなるでしょう。
働きながら暮らしやすい住まいの特徴については、こちらで詳しく紹介しています。
▶ シニア向け賃貸とは?特徴やサービス、一般賃貸との違い、入居までの流れを解説
第3回では、60代・70代が「自分に合った働き方」を見つけるヒントについて解説します。
このシリーズの記事一覧(全5回)
- 第1回:60代・70代が働く「3つのメリット」とは?
- 第2回:年金を減らさずに働くには?収入のボーダーライン
- 第3回:後悔しない仕事選び|自分に合った仕事を見つけるヒント
- 第4回:シニアに人気の仕事10選|未経験・短時間でも始めやすい職種を紹介
- 第5回:仕事探しをサポート!シニア向け支援まとめ
◆参考文献
・日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」[1]
筆者:鶴田智美(つるたともみ)大手求人サイトにて、転職希望者のサポート業務に携わってきました。履歴書の添削やキャリア相談を通じ、年齢やライフステージに合わせた「自分らしい働き方」の大切さを感じてきました。この経験を、記事を通じて皆様にお届けします。
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